私は、他の人とは血の色さえ違うのだと、思っていた。
王の子だから、尊い血だから。
私は特別だ。
ずっと、ずっとそう思っていた。
そこらへんにいる普通の貴族たちよりもずっと、私は遇せられるべき。
そんなことをあたりまえのように。
王宮にもすでに戦火の音が響き渡る。
いつのまにか蜂起していた人々は、誰かの手によってまとめ上げられ、まるでよく訓練された軍のように押し寄せてきた。
それを成しているのが、私のそばにずっといたはずの従者の一族であり、彼らは私が彼らを虐げた、と罵っている。
そんなつもりはない。
だって、私は私の思うままにふるまうのが正義でありあたりまえだったのだから。
彼らと私は違う。
だって私は尊い血を持つ尊い身なのだから。
ざくり、と右腕を剣がかすめていく。
熱さを伴った痛みが全身を駆け巡る。
そして流された血の色は、あちこちに倒れている王宮の連中と同じ色だった。
「もうこれ以上見苦しい真似はよしてください」
どこか苦痛を伴ったような顔をして、元従者が私に剣を突きつける。
彼の後ろには彼の仲間だろう戦士たちが幾重にも押しかけてきている。
王宮の片隅、誰も知らないだろう場所に立てこもったにもかかわらず、彼らはここまでたどり着いてしまった。
おそらく、もう父王はこの世にいないのだろう。
どうして、とかなぜ、とかそんな言葉が口をついて出そうになる。
ぐっと歯を食いしばって、彼らにそんな本音をこぼさないようにする。
私は特別で、私は最後の王族、なのだから。
「やりようはあったんじゃないか?」
おそらく、こうなるまでに彼ら側の被害者だとて少ない数ではないだろう。
彼らは悪政を敷いた、とは言うもののこちら側に最後まで付き従ったものも多い。
そんな彼らはもうとっくにいない。どこか逃げてくれていれば、とちらりとよぎる。
「あなたが!あなたが最後まで籠城するから!」
私の言葉に激高しながら、のど元に剣をつきつける。
プツリという音がしてやはりまた皆と同じ色の血が流れ落ちていくのがわかる。
「私は王族なんだ、あきらめるわけにも逃げるわけにもいかない」
そういう風にしか、教わっていない。
私は王族で、将来王様になるのだと。
どれほどの犠牲がでたとしても、逃げてはいけない、と。
私の命と引き換えに、などという世迷言は言ってはならない。
にやり、と笑った私に、元従者がたじろぐ。
そしておもむろに代々王家に伝わる小瓶の中身をあおる。
のどが焼け、液体を吐き出しそうになるのを押しとどめる。
そして、私は最後に元従者に伝える。
「これで、終わったと思うなよ?」
その言葉を最後に私の意識はなくなっていった。
王国は滅び、新たな王を頂いた国が建国された。
だが、正当性のないその血筋と、どこか疑心暗鬼となったかのような中枢は早晩瓦解していった。
最後は、一瞬だけ喜んでいた平民たちにまた国が奪われることとなった。
uodate:04.25.2025/再録:5.29.2025