37 - 白い服を着る
真っ白なワンピースを手に取り、クローゼットに戻す。
それは、確かにデザインはかわいらしい、私もたいそう気に入っている。ちょっとしたお出かけやそこまで形式ばっていないレストランなどにはぴったり、なのかもしれない。
もしかしたらアクセサリー次第ではもうちょっと格式張ったお出かけにも行ける、かもしれない。
けれども、今日、今から赴く場所にはひどく不釣り合いなのはわかっている。
壁際に吊るされている「今日着ていく」はずの洋服に目をやる。モスグリーンのそれは、まあかわいいだろう。よくあるレースあしらいの上に、ミモレ丈のスカートだし、ウエストマークもしていてぼんやりにもみえないし、と。
まあ、無難。
いや、無難以外のそれは求められてはいない。
幼なじみの結婚式で披露宴、そして新郎もよく知る人間のそれに参加するには、基本の基本をと、注意をするぐらいでちょうど良い、とも。
けれど。
ためいきをつく。
それは何にたいするためいきなのか。
のろのろと、身繕いを始める。
嫌々でも、それらの作業をこなしていく。
壁際の服に袖をとおし、基礎化粧品を肌にのせていく。
それが落ち着く間に髪を緩く巻き、丁寧に化粧を作っていく。あまり好きではないけれども、最低限のそれは自分でもできる。
はりきって、美容室でやってもらう気力もなく、淡々と自力でそれらをこなしていく。
完成して、一応姿見で確認をする。
いつもよりはかわいく映っている自分に満足した気になって、用意していたバッグを手に取る。
もう一度、クローゼットをのぞく。
今日着ていけなかった白いワンピースが目に飛び込んでくる。
数秒それを見つめ、よし、という自分に対するかけ声のもと行動を再開する。
実用的とは思えない小さなバッグを手に、お出かけをする。
今日、隣に立っているのが自分ではないのだと言い聞かせながら。
update:07.27.2024